FF13レビュー

FF13レビュー | 螺旋日誌

ファイナルファンタジーXIII
スクウェア・エニックス (2009-12-17)
売り上げランキング: 2

 FF発売日に意図せず高熱となってしまい、どうみてもFFのための仮病です事件から10日経ちましたが、会社ではこれでもかというくらいネタにされまくりました。高熱で寝込んでいて、宅配を受け取る元気すらなかったと言っても誰にも信じてもらえませんでした。
 そんな状況にも負けずにプレイしておりましたら案外あっさりとクリアしてしまいました。軽くレビューをしてみたいと思います。なお、以下の文章にはPlayStation3版FinalFantasy13のネタバレが多少含まれるので、未プレイの方やこれから購入予定の方は読まないほうが望ましいと思われます。ただ、ストーリー本編に関わるようなネタバレはないのでその部分ではご安心下さい。シナリオについてはまた後日ネタバレ覚悟の上で振り返ってみたいと思います。

 

何がやりたいのか見いだせないゲーム

 面白いには面白いのですが、大きすぎた期待は裏切られた上に、7000円という出費には見合わないエンターテインメント性であったと言わざるを得ません。RPGは、ゲーム部分を通して主人公への感情移入が行えるものだと思っていましたが、それをすっ飛ばしてしまっています。プレイヤーをただの傍観者に据えたまま美麗ムービーにてストーリーが展開していくばかりです。Trailerを観て、シナリオには期待していただけにかなり残念です。というかよくこのシナリオとシステムでGOサインでたなぁ・・・ってのが本音です。ひどい。
 ただ、FFの新しい流れを作っていく上では確かに前進していると思います。昔のFFの方が確かにゲームとして素晴らしかったですが、いくら望んでもあの頃のときめきはもう戻ってきません。現在のゲーム機で作るFFは、これで正しいのかもしれない。そう私は思いました。

序盤はほぼムービーを見るだけの退屈仕様

 用語などわからなくても置いてけぼり、メニューの用語辞典や歴史解説などで勝手に補完してくれとでも言いたげなシステムはちょっと信じられません。操作キャラクターが場面に応じてコロコロ代わってしまうのもイケてません。誰に感情移入して物語を咀嚼すれば良いのかさっぱりわからないのです。同時に、作り手がどこを骨として魅せたいのかも見えてこないのです。それぞれのキャラクターに戦うべき理由というかもっともらしい物語が添えられているのですが、すべて他人事です。これは、シナリオの問題ではなくてシステムの問題だと思います。

ムービーは圧巻の一言だが、これは「RPG」か?

 プリレンダなのかリアルタイムなのか区別がつかないムービーは、確かに現在のCG技術を否応なしに見せつけてくれます。その映像に魅入ることは確かなのですが、「これなら映像作品でやれば?」というのが本音でした。FFは映画で採算とれなかった過去があるので、ゲームで出しているのだとも勘ぐれます。映画一回7000円だと誰も観ないでしょうけどゲーム一本なら結構売れますしね。全体のストーリーのボリュームとしても、映画一本がいいところかと思いました。

フィールド移動の自由性は皆無

 せっかく美しい世界を探検できるのに、なんでこんな仕様になったのか理解に苦しみます。開発が楽だからとしか思えません。いわゆる「ダンジョン」は少なく、多くが市街地戦やら山道でストーリーが進行していきますが、そのどれもがほぼ一本道です。「ほぼ」というのはたまに宝箱が隠れているのでそれを回収するくらいです。街を歩くこともありますが、あくまでストーリーのつなぎとしての一本道の移動を行うだけであり、自分でいろいろな場所を歩き回ってみる、という楽しみは皆無です。ダンジョンにしても、頭を使うような特別なギミックもなく、怪しいところを自ら調べるでもなく、ご丁寧にガイドが指し示してくれた点を調べれば何の苦もなく次の道への扉が開く/乗り物が動くといった感じです。これはゲームではなく、作業ではありませんか?

テンポの良いバトルだけが唯一救われる

 バトルに関しても序盤はメンバーの入れ替えや成長も抑制されているのでさっぱり面白くありませんが、中盤になると作戦(オプティマ)を状況に応じて切り替えて戦わなければならず、なかなか面白くなってきます。今作の唯一のゲームとしての救いはこのリアルタイムジョブチェンジとでも言えるオプティマでしょう。しかし、メンバーを入れ替えるたびにオプティマの編成もリセットされるひどい仕様は、スクエニ社内で誰も疑問に思わなかったのでしょうか・・・。バトルメンバーを入れ替えて様々な敵に対応するのも楽しみの一つかと思うのですが、この作業が面倒なためにほぼ固定メンバーで挑むことになりました。
 テンポがよい、と書きましたが、オプティマを切り替える際にわざわざキャラクターが踊る(ポージングする)ので、その間に致命傷が広がることがしばしば・・・スピード感の中で作戦を切り替えて戦うのが唯一楽しいのに、それに完全に水を差す仕様です。なんというか、ゲームとして問題はないけどカイゼンも見られないよね、って言いたくなります。
 

賛否両論のバトルリスタート

 バトルについては、初心者にも優しく、死んでも(あるいは戦闘中でも)戦闘前からリスタートできるようになっています。これについては否定的な意見も多いようです。しかし、私はリスタートできることがゲーム性を損なっているとは思いません。勝てない相手には同じ戦法と同じ能力では何度挑んでも勝てないからです。ゲームが進むと、「どうやっても今の能力では勝ち目がない」敵がマップ上にいる場合があります。今作では、敵に触れなければ戦闘に突入しないので、こういう敵は逃げながら進むしかないのですが、もし何かの間違いで戦闘に突入してしまった場合、セーブ地点からやりなおしというのはあまりにも理不尽と言えます。そういった点からも死んでもリスタートを採用したのは妥当であるといえるでしょう。
 また、今回はゲームオーバー条件が「全滅」ではなく、「操作キャラクターの死亡」である点にも注意です。いくらレイズの使える仲間が生き残っていてもダメ、操作キャラ一人死ねば即終わりです。これはなかなかシビアな条件であることがプレイを進めるにつれてわかってきます。しかしこの条件がなければ、即死級の強さの敵にも何とか勝ててしまう状況が生まれるので、妥当なシステムであると思います。

これはひどい、セーブデータは毎回新規作成デフォ

 何をさしおいてもびっくりするのが、「セーブする時に必ず新規セーブにカーソルがある」ってことですね。上書きセーブは非推奨で、どんどんセーブデータを作っていくべき・・・なのでしょうか。それにしてもセーブポイントがびっくりするほどある今作で毎回新規セーブしてたらどうなるんだと心配です。セーブポイントからの復帰を使うのはゲームを再開するときくらいですからね。ムービー→ここまでの物語をセーブしますか?→ムービー→ここまで(ryの流れが本当にあったのにはびっくりしました。セーブという単語の概念を覆されました。単に、「栞」としての意味のほうが強いのかもしれません。

やりこみ要素も魅力薄

 装備の成長システムはやりこみ要素のひとつとして設定されているのでしょうが、改造に特にバリエーションがあるわけでもないので、ハマるだけの要素はないかと思いました。もう少しプレイしてみないとわからないかもしれませんが。キャラの成長についても、経験値「クリスタルポイント」をどこの成長に振り分けるかでちょっとの差はつくのですが、もともと戦闘でつかうアビリティが少ないですから、自由度はほぼありません。まあ、戦闘に関してはもう少し自由度が低くても(このキャラはどうやってもヒーラーにはなれません、とか)があってもいいんじゃないかと思いました。クリスタルポイントさえあれば成長がどんどん進んでいくシステムだと、結局全キャラたどり着くところは同じってわけですよね。

音楽は絶妙

 映像もさることながら、それに合わせたBGMも素晴らしい出来です。美しい風景と音楽に、何度も足をとめてカメラをぐるぐると回しました。ただ、戦闘時のBGMがどう転んでもFFらしくないのが残念でした。特に勝利のファンファーレが無いのは信じられないとしか言えません。確かにあの雰囲気でファンファーレも無いだろうとは思いますが、その辺は何とか工夫して欲しかったところです。

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(ゲーム・ミュージック) 浜渦正志(音楽)
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Tatsuya/spyral について

アラフォー雇われ機械設計技術者。 試作・工作機械・航空機・自動化ラインなど広く浅くやっております。 岡山県在住。大阪、名古屋に在住歴。 熱しやすく冷めやすい、広く浅いオタクです。 二次元ではない嫁を探しています。結婚しました。 ガジェット、カメラ、Android、プラモ(AFVほか雑食)、フィギュア造形、に興味があります。3DプリンタはZortrax M200、Photon所持していますが大抵遊ばせているのでご依頼いただけれれば出力可能。 フィギュアの造形できないけどなんとなくワンフェス・ガレキ勢。 読書目標は100冊/年。(永遠の課題)

FF13レビュー への3件のフィードバック

  1. NGT の発言:

    プレステ/サターンの登場当たりからの、日本の大手ゲームメーカーのプリレンダムービーシーンにやたら拘る姿勢には疑問を感じる。俺が好きか、嫌いかっていう単純な点でもあまり好きではないし、何より言いたいのはメーカーがムービーシーンにかける手間程にはプレイヤーはムービーを楽しんでいないんじゃないか?、ってこと。
    ゲームを「遊ぶ」立場からすると、インタラクティブ性が全く無いムービーが長く挿入されるのは、たとえ美麗さが感動を呼んでもテンポの悪さの方がまさるというのが個人的意見。

    FF13自体には関係無いコメントで申し訳ないんですが、Spyralさんのしっかりした批評には未プレイ者でも感じ入るところがあったので長々と書かせてもらいました。

    • spyral の発言:

      >メーカーがムービーシーンにかける手間程にはプレイヤーはムービーを楽しんでいないんじゃないか
      その通りですねえ。
       ファンタジーには、ある程度空想というか、妄想の部分があって然るべきであって、その部分が緻密に描かれた時点でそれはもうファンタジーではない。自分の頭の中で補完できる部分がゲームとしての感情移入を呼び、またそれがストーリーの面白さに繋がったのではないか。そういった意味で、ドット絵はその補完の魅力を前面に押し出すために最良の手法であったように思う。

       しかしゲームの大容量化・ハイデフ化に伴う「映画+ゲーム」という進化の途が間違っているようにも思えない。ただ、混合の仕方が未だにうまくいってないような印象を受ける。

  2. spyral の発言:

    あれ、ぷちさんのコメントがあったように思うのだがなぜ消えた・・・?
    一応返信を。

    そろそろクリアしました?批判記事ですがFFを愛していることは伝わったでしょうか?
    まぁこのためにPS3買う位だからお察し下さい。
    ってぷちさんは3年前からFF13のためにPS3を暖め続けていたんでしたね。私以上でした。

     映画というものはある事件であったり、他人の一生であったりを「観る」だけで、終始傍観者の立場でOKな物が多いと思うんですが、ゲームの場合はやはり自分が操作する以上その精神の一部が自分とリンクするべきだと私は思うのですね。映画として観るにも中途半端なストーリィだったと思うんですがいかがなもんでしょう。その辺はシナリオ批判編へ続けておきましょうか。

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