乙一氏の第2作品集。
表題作と「A MASKED BALL」の2作を収録している。
「A MASKED BALL」は、解説を読んでから「ああ、なるほどな」と思わされた。ここでその内容を明かすこともできるが、敢えてしないでおく。トイレの落書きと現代社会の問題とを重ねることになろうとは。
さて、表題作であるが、これは語りの方法が上手い。主要登場人物の二人が交互に文章を綴っている形だ。奇妙な男と出会った杏子と、その男から杏子へ宛てた手紙文。それぞれの視点で、物語は紡がれていく。
どうにも煮え切らないこの読後感は爽やかじゃないけど、この物語は私の頭の中に妙にリアルな存在感を持って居座っている。そんな重さがある。