最初にこの本の存在を知った時、正直その意図というか、そこまで森先生が肩入れして描く「真賀田四季」なる人物の魅力が解らなかった。真賀田四季は「すべてがFになる」に登場した、「天才」だ。その言葉以外彼女のことを表現する術がないのでそう書くが、実際には天才という型に当てはめるのも恐ろしいほどの能力と精神を持った人間、それが四季なのだ。
この本を読み終え、私は森先生の作り出した四季という人間が、どれだけ恐ろしく、そして魅力的な存在であるのかにようやく気付いた。ファン投票で人気が高いのも頷ける。もちろん架空の人物であるのだが、この「四季」の登場人物のように、私もまた、彼女のためなら様々なものを投げ出せるかもしれない。そう思った。
それはもちろん萌えだとか女性としての魅力ではなく、何もかも見透かされていそうな、そんな魅力からだろう。彼女の行動は全てが計算されているもので、自分の興味のないものや利用価値のないもの・人には見向きもしない。関わっているだけの時間が無駄なのだ。
まだその可能性と才能を全て見せることはしないが、着々と水面下で、時には大胆に準備は進んでいる。時折垣間見せる少女としての顔と、女としての顔。あれ?これはもしかすると萌えなのかもしれない。
ともかく、この続編である「四季 夏」も期待してこれから読み始めることができそうだ。秋、冬と続くこのシリーズの終わりには何が待っているのだろうか。
以下蛇足。愛蔵版の在庫がいつの間にか復活していた。ほんとに愛蔵するために買おうか悩み中。でも文庫本の装丁もなかなか好みだったので、わざわざ読みにくい愛蔵版を買う必要もないかな。