久しぶりに勢いだけで書きます。
もちろん狭義でも広義でもネタバレを含みますので、まだご覧になってない方はこの先を読まない方が良いでしょう。
結論から書くと、良かったです。
ここでの良い、という定義は心に残った、と言い替えられます。
では、面白かったと言えるのでしょうか?
いいえ、面白くはありませんでした。
主人公、二郎の半生は特に面白いお話・・・観ていてワクワクするような楽しいお話ではありません。
むしろ、この作品で切り取られた部分は悲しいかもしれません。
とにかく、すごくびっくりしたのです。宮崎監督といえばロリコンで戦闘機好きだけど戦争を描きたくないから、今までのいろいろな作品があるとか思ってたわけです。
それが一転、実在の人物を作品にするっていうのだから興味を引かないわけがないですか。しかも戦闘機。戦争です。
ただ、心のどこかで思っていたんですよね。どうせ結構ファンタジーな感じにしちゃってるんじゃないの、と。(それは見終えたあとの、今でも思ってます。原作というか史実をくわしく知らないので)
ところが、普通に描ききってたんですよねえ。
きっと、「戦争のことを描かずに零戦を描いた」ってのはなかなか無茶ですよ。
監督の中の矛盾をそのまま孕んだような作品です。すごい。
そりゃアニメーション独自の誇張表現なんかはあるんですけれど、なんだすごいなー、ファンタジーじゃない土俵でもやっぱすごいなーって思ったんです。
設計者について。
劇中でカプローニ氏が「設計はセンスが時代の先を行く。技術はそれについてくる。」とかいう事を言ってましたね。
あと、技術者が最も自分を活かせるのは10年、だとも。ちょっと表現違うと思いますが。
あれは本当にその通りだと思います。
革新を起こせるのはやはり、技術に裏付けされたセンスがある人です。
センスだけでもダメ。
そしてそれが生き生きと出てくるのはやはり、若いうちだけでしょう。
技術的には未熟なところがあるかもしれないけれど、それを補うだけのセンス、発想があふれてくる。
それが若い設計者の特権です。上司はそれを知識と経験で正してやる必要がある。
二郎はそれができるポテンシャルがあって、時代もそれを後押ししていた。
時代のせいにしたくないけれど、今の設計者が同じ事やろうとしてもけっこう難しいですよね。
私はまがいなりにも機械設計技術者で、しかも一応、航空業界にいるんですね。
劇中で本庄氏が「我々は武器商人じゃない、良い飛行機を作りたいだけだ」と言ってました。
ううむ、今の我々は、どうなんでしょう。国産ジェット旅客機への夢?
半世紀後には奮闘ぶりが美談として語り継がれる名機となっていて欲しいですが、堀越氏や本庄氏のような熱意ってどこかにあるのかな?
・・・きっと、あるんですよね。
私が知らないだけで。
面白かったのは 「『ちんとうびょう』を使います」「これが『ちんとうびょう』か」のシーン。
一瞬なんぞや?と思ったけど、「びょう」は鋲だから、「沈頭鋲」ですね。
閑話休題。
この作品、きっと観る人によってかなり感想が違ってくると思います。
悲恋の物語だと思いましたか?
技術者の意地を見せる物語でしょうか?
幼少の頃からの飛行機への憧憬をファンタジーを交えて描いたのでしょうか。
そのどれもが含まれていて、観る人によってその度合いが違うのかな、と思います。
個人的にはちょっと菜穂子さんとキスしすぎなんじゃねーかと思ったんですけどこれは嫉妬ですよね。
って今知ったけど菜穂子さんは完全に創作だったのか・・・/(^o^)\ナンテコッタ
無知にもほどがありましたね。
あ、でも知らずに観て正解だったかも、です。
何も予備知識ないまま見るのも一つの鑑賞方法ですよ、ね。
追記
そうそう、ベタ褒めしましたけど、タバコに関するところはちょっとアカンなぁと思った。
いくら仕事中にヤニが切れたからって肺結核の嫁さんの前で吸うかなぁ・・・。
当時の技術者だから愛煙家にしないとリアリティないのは解るんですが、それで愛してるとか言うてもな、と思った。
女性が観るのと男性が観るのとでは違うんだろうなあ。
愛煙家の男性である宮崎監督が描いたからきっとああなった。
原作のうちのひとつ(?)、「風立ちぬ」Kindle版は無料だよ。