どこか「怖い」3つの短編を収録した短編集。
どれもかなり突飛な話ではあるけど、「ディスコ探偵」よりはかなり現実的なので安心して読める(笑)
「熊の場所」は、一つの教訓を教えてくれているような面もある怪奇(猟奇?)ミステリ。熊から一生逃げなければならない気持ちを抱えて生きるのはごめんだと、「僕」の父は昔散策中に出会った熊に戦いを挑むべくわざわざ引き返したのだ。そのまま逃げおおせていられたものを。それは決して熊を倒したいという欲望からではなく、自分の弱さを切り離すためだ。その「熊の場所」は誰にでもあるもの。そこへ戻って決着をつけることが必要だ。
という話が根底にあるのだが、小学生が体験するにはとてもあり得なく恐ろしい出来事が詰め込まれている。しかし「僕」はそこへ戻っていくのだ。熊の場所へ。
「バット男」はバットを振り回すある男の物語・・・ではないのだが物語の中心にそいつがいることは確か。途中までは「他人の不幸で物語が面白い!」メシウマ状態で話が進むだけ。だからどうしたの?って感じでもあるのだが、最後の方で印象がガラリと変わって、ああそうかこういうスタンスのミステリもあるのだな、と気づかせてくれる物語。ただ、ほかの2遍と比べると味が薄い感じ。あくまで比べれば、だけど。
「ピコーン!」は書き下ろしミステリで、女子中学生(高校生?)が語り部となって、まるで日記に書くような口調で物語を紡ぎあげていくのが面白い。ちょっと、っていうかかなりの不良、あるいはヤンキー、あるいはDQNという部族なのだけど。でもぜんぜん痛々しいことがなくて、そういう反社会的な行動への憧憬なんかじゃなく、単純に男女の愛が感じられる作品になってる。人によっては泣けるけどグロさと生々しさでちょっと台無しかも、これが舞城。