螺旋階段(1)

螺旋階段(1) | 螺旋日誌 「螺旋階段を上って行くように、生きたいよ。」
何度も聞いた、口癖。


 僕がはじめてその台詞を聞いたのは、確か大学の食堂だったと思う。
春先。希望に満ち溢れた新入生で混雑する食堂。誰もが、我先にと食券を買い求めている。
辛うじて昼食のための席を確保できた者は悠々と食事の時間を取る事ができ、またその機会を逃した者は、安っぽいランチセットを抱えたまま空席を求めて放浪していた。

 僕はそんな若者と席の取り合いをする趣味もないので、2限の授業は途中で退席して一足お先に昼食を頂くことにしていた。我ながらいいアイデアだと思うのだが、それが5年間も大学に通ってしまった理由のひとつになっていたんじゃないかと後に同じ学部の友人から指摘された。気づいてたのならもっと早く言ってくれたっていいと思うのだが、僕は自分のランチタイムを(少なくとも僕の生活の中では、比較的)優雅に過ごすことに決めていたので、どちらにせよ結果は同じだっただろう。
 そういうわけで食堂が混雑の様相を呈し始める前に昼食を終えた僕は、食器を片付けようと腰をあげた、その時だった。螺旋階段なんて、普段聞くことも無い言葉が耳に飛び込んできたのは。最初は文系の女の子が何かの文芸小説でも読み上げて居るのかと思った。でも何故かその言葉は僕の首根っこを掴むような勢いで僕の意識に進入してきた。決して僕好みの、か弱くて消え去りそうなそんな声じゃない、もっとしっかりしていて、まるで母親に叱咤されてるような、そんな声。それまでの食堂内に響いていた雑音はまるでトンネルを隔てた山の向こうから聞こえるような、そんな感じがした。どうやらその言葉の主は後ろのテーブルで食事をしており、文系の女の子同士で自己紹介のようなことをしているらしかった。
 僕はそれとなく一度持ち上げた腰を再び下ろし、もう少し会話を聞いてみることにした。隣でおそらく席が空くのを待っていたであろう男が、怪訝そうな顔をしてこちらを見ている。僕だって早々に立ち去りたいのは山々なのだが、なぜかその時はそんな気分になれなかった。どうして彼女はそんなことをいうのか?それが気になってしょうがない。盗み聞きをしているという罪悪感は最早消え去ってしまっていた。

※この話はフィクションであり、続きはできるかどうかわかりませn

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Tatsuya/spyral について

アラフォー雇われ機械設計技術者。 試作・工作機械・航空機・自動化ラインなど広く浅くやっております。 岡山県在住。大阪、名古屋に在住歴。 熱しやすく冷めやすい、広く浅いオタクです。 二次元ではない嫁を探しています。結婚しました。 ガジェット、カメラ、Android、プラモ(AFVほか雑食)、フィギュア造形、に興味があります。3DプリンタはZortrax M200、Photon所持していますが大抵遊ばせているのでご依頼いただけれれば出力可能。 フィギュアの造形できないけどなんとなくワンフェス・ガレキ勢。 読書目標は100冊/年。(永遠の課題)

螺旋階段(1) への2件のフィードバック

  1. さんぞ の発言:

    小説キトゥァー!!!(゚∋゚)

    ところで前あったROのはやっぱ
    「すぱい先生の次回作にご期待ください!」
    ってなったのだろうか。

  2. spyral の発言:

    ご期待ください(お察しください)

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