実は24日に書いている記事だが、カレンダーの空きを埋めるために、22日に押し込むという卑怯なことを考えているのである。
森博嗣氏の二つ目の短編集「地球儀のスライス」。私はまだS&Mシリーズを3作目までしか読んでいないので、発刊された時期としては少し飛ばしてしまったわけだが、ちょうど古本店で見つけたのと、まとまった時間をとれそうにない時期だったので短編集の方が都合がよさそうだと感じて買ってみた。
私のお奨めは「素敵な日記」と「僕は秋子に借りがある」である。
短編集というのは、本当にその作家の色んな面が見えてくる。作家が自分のやりたい色んなことを試している場でもあるからだと思う。かといってそれぞれの作品が力不足になるということは決してなく、逆に溢れんばかりの荒々しさをもった力を感じる。本作「地球儀のスライス」を、何の予備知識も無く読んだ人には、果たしてこれがミステリ作家の書く文章だろうか、と思うことが多々あると思う。
お奨めに挙げた「素敵な日記」は、どちらかというと普段の森氏の考え方に近いのではないか。とはいえその文体、表現方法は明らかに異なっていて、面白いアプローチになっている。これは長編作品では出せない味だ。「僕は秋子に借りがある」は、確かに謎を含んでいるものの、いわば理系的な考えよりは、理論では表せない文系的、感情的なものが根底に流れている。私は未熟なためにこの魅力を到底表現しきれないのが残念で仕方が無い。
もちろんお奨めに挙げていないほかの作品も珠玉揃いで、S&Mシリーズでおなじみの面々が登場する御話もあったりして見逃せない。ちなみに文庫版の解説は冨樫義博氏がなされている。この解説(に付随する「イメージ図」も…いや、ただの図なので期待しないほうがいいが)も一読の価値あり。書店で見かけたら解説ページを立ち読みしてみよう。買うときはここのリンクからAmazonでおねが(略