とまあ、ワンフェスの詳しい記事はまたおいおい書くとして・・・
今回ワンフェス向けに作成した「1/12 大洗女子学園高等学校 銘板」はおかげさまで好評を得、用意した数量を全てご購入いただけました。購入いただいたみなさん、また告知のツイートをRTしてくださったみなさん、その他アドバイスを頂いたみなさん、誠にありがとうございます。再販について何度かお問い合わせも頂き、作り手としては感慨ひとしおといったところですが、来年の話をすると鬼が笑うとも申しますし、再販のお話はここでは棚に上げてしまいましょう・・・。
やってやる やってやる やってやるぜ~
夏のワンフェス #wf2016s に #ガルパン より、「1/12 大洗女子学園高校銘板」を持っていきます@熊猫工務店。
真鍮エッチング製(販売は銘板部分のみです)。よろしくお願い致します。 pic.twitter.com/oY0ckriDNN— すぱ㌠@WFお疲れ様でした。 (@t_spyral) 2016年7月9日
今回は、エッチングによる銘板の作り方について、自分のメモ書きも兼ねて書いておこうと思います。
製作にあたって、私もネット上で色々とエッチング手法について学ばせて頂いたこともあり、自分の知り得た情報についてはさらに再発信していきたいと考えております。
というのが実に半年以上ぶりにBlogを書く理由であったりします。2016冬のワンフェスのこと(参加してました)なんか1ミリも書かないままですが、どうぞお付き合い下さればと思います。
また、今回の手法を書くに当たり、「さ、再販がめんどくさいから自分で作りなさいよね!」ということではないことを重ねて申し添えておきます。
1.材料を用意します
必要な真鍮板を切り出しましょう!!
・・・これがなかなかツテがないと難しいところではありますが、1個くらいなら金ノコで切れないことも無いです。
その場合、板厚は1mm以下のほうが良さそうですね。厚くなるとなかなか綺麗に仕上げるのは難しいです。
また、量産ではない(1点物)の場合は、エッチングしたあとに丁寧に外形に沿って切り出したほうが良いでしょう。
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2.原型(原版)を用意します。
エッチングで溶かさない部分をマスキングするための「何か」が必要です。
一般的な手法では、インクジェット用の用紙にレーザープリンターにより印刷し、その印刷物のトナーをアイロンの熱により転写するというものがあります。
「真鍮 エッチング」でググると参考にさせていただいたサイトが出てきますが、ご紹介しておきます。
・真鍮エッチング
アイロンの熱でレーザープリンターのトナーを真鍮に再印刷するといったイメージでしょうか。印刷した紙ごと貼り付けるイメージでやるとうまくいきます。
もちろんその手法も試したんですが(写真が無くてすみません)、なかなか歩留まりが悪く量産には向きません。
また、あっつあつのアイロンで転写するという手法は時間もかかりあまり現実的ではありません。
1点ものの場合でしたら、レーザープリンターさえ用意できれば費用も抑えられ有効な手法だと思います。
今回私が利用したのは、インスタントレタリング。
インレタ.com(アートワークス株式会社)様にて制作して頂きました。
レタリングシートは転写の時の取り扱いが簡単なのも良いのですが、今回はエッチングのマスキングのために使用するため、不要となった場合にラッカーシンナーで簡単に溶かせるというのも利点です。
1点ものを作成する場合はコストに見合わないと思いますが、同品を大量に作らない場合(多品種少量の場合)でも自由にレイアウトして作成することが出来ますので、場合によってはレーザープリンターによる転写よりもお手軽な選択肢になるかと思います。
原版を転写します
・・・簡単に書きましたけどこれ、結構シビアです。
インレタは簡単に転写できる半面、下手に力を加えるとそこからもう動かせない状態(失敗が許されない状態)になってしまいます。
転写の際にはご用心下さい。
原版をレタッチ
レタリングシートは簡単ですが、転写にミスをする場合もあります。
レーザー転写の場合もそうなのですが、転写したマスキング部分が剥がれてしまったりした場合は、油性マーカーでレタッチできます。
もちろんあまり大きな範囲になりますとレタッチどころではないので、おとなしくやり直した方が良いでしょう。
エッチング不要部分をマスキング
今回、エッチングを施すのは表面のみですから、裏面と側面は解けてしまっては困ります。
そのためのマスキングをほどこします。
前述のように、油性マーカーで塗ったりしてもいいですし、マスキングテープでエッチング液が入り込まないようにしても良いです。今回も、試作段階ではマスキングテープにてマスクしていました。
今回私がとった手法は、ラッカー塗料での塗装です。
転がってたマホガニーサフを使用しましたが、なんでも良いと思います。
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また、ラッカーにこだわらなくてもよいとは思いますが、この先何度も水につけますので、水溶性のものだと困るかと思います。
金属への塗装ということで、塗料の食いつきが気になる方も多いと思いますが、これはもちろんあとで剥がす塗装ですので、あまり食いつきが良すぎてもこまります。かといって、エッチング工程の途中で禿げてしまっても問題です。とはいえ、プライマーまで塗る必要は無いでしょう。私は軽い脱脂程度で吹いています。
さて、ここまでくればいよいよエッチングです!!
エッチングです
注意!!
金属を溶かしたエッチング液は、銅を含む重金属溶液となりますので、さまざまな公害病を引き起こしたのと同類の猛毒です。この溶液を下水に流したり、ましてや近くの川などに流したりすることは法で禁じられており、重犯罪です。ご自身の住んで居られる自治体の取り決めに従い、適切に処分してください。生石灰・消石灰などで無毒化(溶液の中和および金属析出)しておけばとりあえず安心ですが、処分方法については行政に適切な方法を仰ぐようにしてください。また、作業されるご自身も取り扱いにはくれぐれも注意してください。
というわけでエッチング溶液により溶かしましょう。
塩化第二鉄液による酸化作用です。
FeCl3+Cu=FeCl2+CuCl
FeCl3+CuCl=FeCl2+CuCl2
ごめんね特にプラグイン入れてないから化学式正しく書けないけどごめんね。雰囲気で解ってくれると信じてる。
詳しくは下記のWikipediaを見てください。
塩化鉄(III) – Wikipedia
化学知識は高校化学で終わってますが塩化鉄(Ⅲ)の塩素を奪って銅が塩化銅になり水中に溶け出すという感じかな。
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エッチング液を入れる容器は金属製のものではなく、樹脂製のものを選ぶように注意してください。金属製のものでは程度の差こそあれ、溶け出します。
ちなみに濃厚な鉄の溶液の匂いがします。見たまんまですが血のような香りです。
ここで銘板をエッチング液に入れるときのポイント
・溶かす面を下に向けること
上記の化学式により、銅(真鍮)と反応したFeCl3溶液は、はFeCl2となり、塩化銅(CuCl)を生成します。それが加工部分に停滞すると、それ以上の酸化反応を阻害してしまいます。そこで、堆積物が加工部には溜まらないように、溶かす面は下に向けてセットしましょう。こうすることで、反応した物質は容器の下に落ちるようになります。
・溶かす面をスポンジなど多孔性のもので受ける
上述の通り、下に堆積物を落とすのはいいのですが、普通に伏せていただけでは間がふさがってしまいそれっきりですよね。スポンジやゴムなど、小さくても孔が空いているもので嵩上げして、そこで受けてやるのがよいでしょう。私は、百均で売っているメラミンスポンジを細く切って受けています。
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・エッチング液を温める
化学反応を促進するためには温度を上げるのが定石・・・ということで、早く終わらせたい方や、一度にたくさん反応させたい方は温めると良いみたいです。
小さなものをエッチングする場合、加減を調整しなくても良い場合(貫通穴の場合)なんかは、何かしらの保温器を使って、暖めて一気にやっちゃったほうが良いですね。
・エッチング液はケチらない
エッチング液は使い捨て。上記の反応が進むにつれて有効成分は減っていきますので、大事にしたいところですが、反応物に対してそもそも量が少ないと反応がおっそいです。ここは量をケチらずに、とはいえ反応面が十分浸かる程度でだばーっといきましょう。だばーっと。
加工面を重曹水で洗い流しながら、ちょくちょく様子を見ることが必要です。マスキングを傷つけないように気を付けて。
加工条件にもよりますが、0.5mm程度の加工に、夏場の常温で1時間半~2時間ほど放置が必要でした。
エッチング完了
重曹を溶かした水で洗い、綺麗にしましょう。
重曹を使うのは、前述のように中和するためです。エッチング溶液がついたままのワークを投入すると、しゅわしゅわ音がでるほどの反応をします。
黒染め
文字以外の部分を黒くするには?
もちろん塗装でも良いのですが、今回は折角メタル素材を使っていると言うことで黒染め(酸化皮膜)を生成してみましょう。
モデルガンなどにはよく使われている手法らしいです。黒染めは一般的な機械加工部品にも使います。真鍮なので強さは違うでしょうが原理的には同じでしょう。
どこのご家庭にもある、「バーチウッド ブラスブラック」を意しましょう。無い場合はAmazonでお買い求め頂けます。
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これは真鍮を黒染めできるというすぐれた薬品です。ただ、見た感じアメリカーンな勢いで普通にDANGER:Poisonって書かれているのでご注意下さい。
この黒染め液を、綿棒で塗っていきます。というか、乗せていくといった方が正しいかも、ですね。塗った直後は透明な液体ですが、すぐに真鍮と反応して青く黒く変色していきます。文字の部分はレタリングによってマスキングされているので、気にすること無くどばーっと塗ってしまいます。ただし、この液は多く塗ったからと言って黒さが変わるわけではなさそうですので、ほどほどに。黒さを増したいのであれば、重ねがけが有効かもです。
しばらく置いたのち、表面のマスキング用レタリングおよび裏面のマスキング塗装を剥がしてしまいましょう。ラッカーシンナーを使い、キムワイプでひと拭いすれば綺麗に落ちます。
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今回はやってないですがドブンと漬けてしまってもいいかもですね。ツールクリーナーレベルの強いシンナーを用いるとかなり楽に落とせますが、諸刃の剣。使用する場合は換気を良くして、防毒マスク着用しましょう(普通のラッカーの場合でも)。
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完成です!!
表面のできあがりが気になる場合は、ヤスリなどで軽くこすってやれば金属面が露出します。また、真鍮ですから専用のコンパウンドで磨いてやれば独特の輝きを持ちます。
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今回は、こういったクロスタイプのものが扱いが楽だと感じました。磨かなくても良い部分が入り組んだ作品ですと、コンパウンドだとがそのような部分にまで入り込んでしまって扱いが難しいからです。
さて、いかがでしたでしょうか。簡単に作れそうでしょう?(ゲッソリ
また冬にはワンフェスにお持ちできればなあと思いますが、他の申請とか、そもそも抽選落ちませんようにって部分で神経すり減らさないといけないので量産はせめて受かってからにしようかなと思っています。