ひさびさに舞城、しかも上下巻ある最大長編なんか読んでしまった。読み進めるとともに、ああ、こんな感じだったな・・・とそのエグみのある「味」を思い出す。そして1章読んだだけでおなかいっぱいになってしまうがここで中断してしまうと再開へのハードルが一気に高くなってしまうのでやめられないという中毒性をもった危ない作品であるので、用法用量を守って正しくお使いください。
ミステリだしグロエロだしSFだしファンタジーだし。登場人物の名前は相変わらずトチ狂ってるし何がなんだかわからない世界観だし。不思議すぎて勢いがあってやっぱり文章の洪水。暴力。もうなんでもありですよ、ってな感じ。それでもこれで作品として破綻しておらず、小説として出版できているのだからただただ感嘆しながら読み進めるしかない。書いてあることが段々小難しくなっていくんだけど、あんまり内容理解できてなくてもこれ面白いんじゃないの?って思わせる流れの力がすごい。
とりあえず表紙をみて「おや?」と思われた方も多いであろう。この装丁、「ミク」の公式絵を描かれているKEI氏の絵である。これ登場人物を描いたジャケットなのかどうなのかすら物語と同様によくわからんのだけど、とりあえず綺麗だからいいか。こういうイメージで登場人物が脳内に描かれるのだけど、文体のハードさと噛み合わなくて困る。
序盤はごく普通の(?)探偵ものなのだろうかという書き出し。
いきなり不可思議な出来事が起こって舞台は殺人現場へと移る。おお、ミステリっぽくなってきた、と思いきや、「名探偵」がそれらしい推理を披露しては勝手に死んでいく、みたいなメタミステリ小説へ変身か?・・・と思っていたのだけど作者の意図はそういうところにあるわけじゃないらしい。
物語は頭のついていかない私を放置して、急速に展開、あるいは収縮していく。
下巻も同じように踊るようなリズムで引き込まれるんだろうね、きっと。