「すべてがFになる―THE PERFECT INSIDER」をこのBlogで紹介させて頂いてから、実に一年以上が過ぎ、ようやくS&Mシリーズの一応の完結編となる本作を読み終えた。少しばかりではあるが感慨深い、と共に自分の読書ペースの遅さにただただ後悔するばかりだ。ちなみに、「一応の」完結編と書いたのは、この作品より後の作品においても、萌絵と犀川の登場するストーリーが存在するからだ。どんな話を見ることができるのか、本を手にしていない今から楽しみでもある。
さて、話を「有限と微小のパン―THE PERFECT OUTSIDER」へと戻そう。
余談ではあるが、この文庫本、かなりの重さがある。もちろん歴史モノであるとか、長編大作を読みなれている人にはなんて事のないボリュームではあるが、いつもそこまでの長編を読むわけではない私にとっては正直骨が折れた。特に持ち歩くと重いので難儀だ。
しかし内容は素晴らしいの一言に尽きる。読む前から四季博士が登場するというのは解っていたが、実際に作中に登場するとなんという威圧感で、そして現実味を帯びていない存在なのだろう。だがしかし彼女の存在以外は十分にありえる話で物語は進行するのだ。あたかも、彼女もまるでいるのが当然のような、そんな心境にすらなる。それに彼女はとても魅力的だ。何がそうさせるのかわからないが、やはり現実味のない存在、自分からかけ離れた存在という点であろう。この点は萌絵にも通ずるところがある。萌絵と四季、森氏は2人の自分の創造した女性を、まるで我が娘のように扱っているような、そんな印象がある。
さて、本作の読み方としては、頭をやわらかくする必要があるだろう。最初からこの本は「ミステリー」というジャンルなんだ、という先入観を捨て去って読むべきだ。萌絵と犀川、四季を中心とした多くの人物を森氏が描くことで、その台詞を通じて何を伝えようとしているのか…犯人を追い求めるよりは、そちらに重点をおいて読むべきなのかもしれない。
ま、自分が好きなように読むのが一番!なんですけどね。