ドラマは観ていなかったけれど、タイトルに惹かれて原作を読了。
話の方向性が全く予想外だったので、最後まで楽しく読み終えることができた。
というのも、玉木宏と綾瀬はるかでドラマ化されるぐらいなので、何かしら甘い恋愛が絡んでくるんだろうな、と思っていたのだ。
けれど、実際読んでみると驚いたことに強烈なファンタジーものだった。
「鹿男」が何かの比喩でも何でもなく、本当に「鹿の姿をした男」を指しているとは。
臨時教師として短期間だけ奈良に滞在することになった主人公は、鹿(神様らしい)の使いとして日本を守るために必要なあるモノを奈良に持ってくるという重要な任務を負うことになってしまう。
鹿が喋るという奇天烈な設定に驚くが、鹿を神様とする信仰の元ではあり得ることかもしれない。実際私たちが聞こえていないだけで、こういう鹿はいるのかもしらん、と思い始め…はしないけれど、いると素敵かもしれない。それが人間の顔を鹿に変えてしまうような、勝手をする神様であっても。
誰が敵なんだ?というのを見破るという点で、この作品はミステリーとも呼べそう。
しかし、そのネタだけでは本作の魅力としては弱い。
謎解きというより、古代の神話を土台とした上で現代の奈良で繰り広げられる紆余曲折こそ、読み応えを感じるところであろう。